十一面観音像

機関管理番号
1337-0
分類
絵画
作品名かな
じゅういちめんかんのんぞう
員数
1幅
時代世紀
鎌倉時代・14世紀
品質形状
絹本著色 掛幅装
法量
縦60.9 横26.8
所蔵者
奈良国立博物館
 画面中央に、方形の岩の上に直立する十一面観音を描く。十一面観音は、右手に錫杖(しゃくじょう)を持ち、方形の岩の上に直立し、光背(こうはい)の周縁部にめぐらされた円相内に十一面観音を象徴する「キャ」の梵字(ぼんじ)が表れされるという際だった特徴を有しており、長谷寺(はせでら)に本尊(ほんぞん)として安置される十一面観音像の姿とほぼ一致する。長谷寺の十一面観音像は、天平五(七三三)年の最初の造立以来幾度となく焼失と再建を繰り返し、現在の像は七度目の焼失直後の天文七年(一五三八)に造立されたものである。古くから霊験(れいげん)あらたかな像とみなされ、貴族を中心に厚い信仰を集めた。そのため長谷寺十一面観音の特色ある姿を踏襲する彫刻や画像も少なからず製作されており、一般に右手に錫杖を持つ観音像は全て長谷寺式十一面観音像と呼ばれている。本図の場合、肉身を輪郭する朱線は細く張りがあり、着衣を埋め尽くす錐金文様(きりかねもんよう)も極めて繊細であり、その製作は鎌倉時代後期に遡るとみてよかろう。長谷寺本尊十一面観音像がもつ持物(じぶつ)・光背(こうはい)・台座の特色を全て忠実に写す現存最古の作例であり、焼失を繰り返してきた長谷寺像の過去の姿を知る手掛かりとしても極めて貴重な存在である。さらに本図の場合、肉眼では観察しにくくなっているものの、観音が立つ盤石(ばんじゃく)の手前から向かって右辺下半にかけて土坡(どは)が右上がりに広がり、ところどころに紅葉を伴う下草と樹木が配されており、それ以外の背景部分は全面にわたって海波を描いて大海原を表していることが赤外線写真によって判明する。実際の長谷寺の本尊像は山中に安置されているが、本図の場合は大海原を背景にすることから、南海上にあるという観音の浄土、補陀落山(ふだらくさん)を表すと考えられる。つまり本図は、長谷観音信仰と補陀落山信仰が結びついた稀有(けう)な画像であるといえるのである。

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